鍵は人間にある
著者: Adrian Wibleプロジェクトのチームメンバーはみな、願望、強み、遠慮、弱みをもった人間であるという事実を見落としてはいけません。プロジェクトの成功は、あなたのガントチャートの妙技やプロジェクトトラッキングの腕前よりも、チームメンバーの姿勢と適性にかかっています。遠慮せずにプロジェクトをマネジメントしましょう。でもチームを率いていることを忘れてはいけません。
私たちの多くはマトリックス環境でプロジェクトを管理しています。そこでは、チームメンバーはプロジェクト・マネジャーと部門マネジャーの両方に業務報告することになります。マトリックス環境の場合、チームのために人材を雇ったり、解雇したり、評価したりする責任はプロジェクト・マネジャーにはありません。だからと言って、チームメンバーの世話や育成の責任を、人事部や組織階層上のマネジャーに丸投げしてはいけません。
ほとんどのマネジャーは人事処理やその部門の技術的知識によって昇進したのであって、人をやる気にさせる能力によってではありません。あなたのプロジェクトが成功するかどうかは、あなたの指導力にかかっています。リーダーシップに関する本はたくさん出ているので、貪欲に読みましょう。
チームのだれもが、プロジェクトに貢献し、プロジェクトから学び、プロジェクトを達成したいと思っています。チームメンバーのこうした願望を見つけて掘り下げるのが困難なときもあるでしょう。しかし、それこそが、プロジェクトマネジメントをやりがいと楽しみのあるものにしているのです。
定期的にチームメンバーと一対一で話し合いましょう。彼らの問題が何なのかを究明し、彼らに意見を求め、プロジェクトに対して発言権を与えましょう。彼らの意見を真剣に受け止めて、行動するのです。
成長して何をやりたいと思っているのか、チームメンバーに真剣に尋ねましょう。だれもがキャリア願望をもっています。彼らのキャリアを気にかけるメンターになりましょう。これがどんなに強力なことか、あなたはびっくりするはずです。
チームメンバーに対して直接、率直かつ素直に接しましょう。レビュー時に限らず、定期的にフィードバックしましょう。人に対してではなく、行動に対してフィードバックすることが大切です。マネジメント稼業には問題が山積みです。あなた自身が学びましょう。
チームメンバーにパフォーマンス上の問題があるときには、CRAM(Constraints,Resources, Aptitude, and Motivation:制約、リソース、適性、モチベーション)モデルを適用してみましょう。プロジェクト・マネジャーはパフォーマンスがわるいのをモチベーションの問題だと診断しがちです。CRAM モデルによると、モチベーションは検討すべき最後の問題だとされています。チームメンバーは効率を妨げるような個人的な事情に悩んでいるのかもしれません。例えば、離婚したり、結婚したり、子どもができたり、依存症と戦っていたりなどです。
チームメンバーには最大限の貢献をするのに必要なリソースがないのかもしれません。例えばQA テスト環境がなかったり、使えるハードウェアが古かったりなどです。予算制約のために、テスト環境の構築や必要なソフトウェアのライセンス購入が制限されているのかもしれません。あるいは、ドメイン専門家(ビジネスアナリスト、顧客、エンドユーザー)と話せない状況なのかもしれません。
果たすべき役割に向いていないチームメンバーもいるかもしれません。プロジェクトに必要とされるプログラミング能力がないのかもしれません。もしそうであれば、できれば別の役割を見つけましょう。あるいは、その人の強みが活かせる別のチームを見つけましょう。
チームメンバーにパフォーマンス上の問題があるとき、モチベーションは最後に考えるべきことです。制約、リソース、適性といった問題を解決してから考慮しましょう。
リーダーとして、チームを構成する個人とつながりを持ちましょう。あなたはその結果に驚くはずです。