「自前主義」に陥るな

プロジェクトマネジメントというのはプロセスの集まりにすぎません。それらが統合されて組み合わさったとき、プロセスの集まりは方法論になります。そして、こうしたプロセス/ 方法論はほとんど何にでも応用できます。

プロジェクトマネジメントに関連して、5 つのプロセス群があります。

  • 立ち上げ:プロジェクトの存在を許可あるいは認識するプロセス。
  • 計画:何をする必要があるのか、どのように取り組むのかを特定するプロセス。
  • 実行:結果を得るために、計画フェーズで特定したプロセスを実際に実行するプロセス。
  • 監視コントロール:プロジェクトが計画通りに進捗しているか評価するプロセス。
  • 終結:やったことが期限内に、割り当てられた予算内で、きちんと仕様通りに完了し、その結果、プロジェクトが約束した成果を達成できたのかを特定するプロセス。

特にIT 分野では、プロジェクトマネジメントについて他のプロジェクトがどんなことをしているのか、ほとんど調べようとしてきませんでした。IT プロジェクトの成功率を高めようと、先進的あるいは成熟した分野の「ベストプラクティス」を適用したり、導入したりする事例はほとんど見かけません。

ベンチマークとして使うべき分野が2 つあります。それは医療と民間航空パイロットの分野です。なぜだと思いますか?

医療と民間航空パイロットの分野にはいずれも、サービス提供システムにプロジェクトマネジメントが組み込まれているためです。医者にとって、それは手術や治療であり、パイロットにとって、それはA からB への各フライトです。しかし、IT の観点から見てもっと重要なことは、医療やフライトの成功率は実にうらやましい限りの高さであることです。

それでは、医者やパイロットは、IT 分野では見られないどんなプラクティスを実践しているのでしょうか?

第一に、意思決定について、医者/ パイロットにはほぼ全権が任されています。その反面、そのポジションにいる人は金銭的にも専門的にも全責任を負うことになります。例えばパイロットの場合、ミスをすると自らの生命すら危険にさらすことになるのです。

第二に、医者もパイロットも「並の」プラクティスを容認しません。PMI のPMBOK® ガイドでも、プロジェクトマネジメント知識体系とは「一般的に『すぐれた』プラクティスだと見なされている」スキル、ツール、テクニックのことだと述べられています。

第三に、医療や民間航空の分野で実施されているプロジェクトマネジメントは、単独の方法論ではないということです。確かにプロジェクトマネジメントは存在しており、うまくいっています。その大きな要因は、プロジェクトマネジメントがアセットマネジメント(プロジェクトに提供する組織の資産の割り当ておよび利用に責任のある部門)とオペレーションマネジメント(日々の業務を遂行することで組織に利益をもたらす部門)と十分かつ密接に結びついていることです。組織のリソースを適切に提供するアセットマネジメントと、現実的な期待を抱く内部顧客としてのオペレーションマネジメントがなければ、IT プロジェクトはどんな組織であっても成功しません。

プロジェクト・マネジャーはIT 分野以外の世界にも目を向けましょう。IT プロジェクトよりもずっと高い成功率を誇る他の分野のプロジェクトマネジメント、特に医療分野と民間航空パイロットの分野でうまくいっているプロジェクトマネジメントについて学ぶ必要があります。