成功はビジネス価値で評価される
著者: Barbee Davisプロジェクト・マネジャーは、時間、コスト、スコープ、品質基準などの評価基準を満たすことに忙殺されるものです。そのうちプロジェクトは、それ自体が目的となります。そして、こうした評価項目を期待される値で実現できるかによって、私たちは評価されます。
私たちは、「プロジェクトの成功は組織にもたらすビジネス価値で評価される」という事実に注目する必要があります。もし市販のソフトウェア製品を作っているなら、「成功」の評価要因は明確でしょう。私たちはプロジェクトマネジメントスキルを活用して、製品を市場にすばやく届ける必要があります。競合が同等もしくは優秀な製品を作る前に、顧客ベースの大部分を確保するためです。
私たちは商品の需要が尽きる前に、市場の過半数を獲得しなくてはなりません。そのためには顧客がインストールしやすく、使い方を学びやすいようなソフトウェアを設計する必要があります。ソフトウェアのメンテナンスやアップデートも容易にできなくてはなりません。
多くのプロジェクト・マネジャーは、自分の仕事は単にソフトウェアを完成させることだと思っています。しかし、プロジェクトをビジネスニーズに結びつけておかないと、いくらすばらしいソフトウェアを作っても組織のROI(投資収益率)から見れば失敗に終わるでしょう。
もしプロジェクトが社内向けであれば、どうやってお金を節約したり稼いだりするのでしょうか?
開発しているソフトウェアをもっと高速にしたり、もっとシンプルにしたり、もっとすぐれたアーキテクチャにすることで、ハードウェアリソースを削減すればよいのでしょうか?
もっとすばやく注文を受け付けて、それを処理し、すぐに納品できるようになれば、もっとお金を稼げるのでしょうか?
メンテナンス要員をほとんど必要としないソフトウェアを作ったり、ヘルプデスクへのコール数を減らすようインフラを変更することで、お金を節約すればよいのでしょうか?
もしプロジェクトがシステムインテグレータ向けであれば、うまくタスクを並列化したりリソースを平準化することによって、会社にとっての利ざやを増やしたり、顧客から信頼性が高いという信用を得られるのでしょうか?
すぐれた手腕によって多数のプロジェクトをすばやく完成させることで、サプライヤーと同格に認められ、大きなハードウェアディスカウントが得られるのでしょうか?
プロジェクトを完了させることが会社の利益にどう結びつくのかを明確に理解すれば、チームのモチベーションは高まり、現場で難しい判断をしやすくなります。競合するプロジェクトの中から特定のプロジェクトに投資するという判断が下されたとき、そのプロジェクトはほかの後回しにされたプロジェクトと比べて、どうして重要だと見なされたのでしょうか?
プロジェクト・マネジャーは通常、こうした重要な質問に対する回答を与えられていません。ですから、プロジェクト・マネジャーであるあなたは、質問の仕方を学ばなければなりません。その回答によっては、時間、お金、品質以外にも、そのプロジェクトに重要な要素があることがわかるかもしれません。その回答がわかれば、それに応じて回避策や代替案を準備できます。また、そのプロジェクトが生まれたビジネス理由に合わせて、どこにコンティンジェンシー(予備積立金)を費やすべきかもわかるでしょう。プロジェクトを成功させるには、プロジェクトのビジネス価値を理解することが重要なのです。