休暇をキャンセルしない
著者: Joe Zenevitchソフトウェアプロジェクト・マネジャーというのは、きつい職業です。チームで一番目立つポジションであるだけでなく、通常はその役割にある唯一の人物であり、バックアップがいません。そのなかで休暇を計画するのは、なかなか難しいことです。外部コンサルタントであればなおさらです。自分の不在がプロジェクトに悪影響を及ぼすような気がしてしまうのです。
このリスクを最小限にしようと、新米プロジェクト・マネジャーは休暇をキャンセルします。最悪の場合、最初から休暇をまったく計画しないのです。しかし、私が時間をかけて学んだことは、プロジェクトにつきもののストレスの多い状況から解放されるためには、定期的に休暇を取る必要があるということです。これまでのキャリアで取り損ねた休暇について思い出してみましょう。ひどく不快に思いはしませんでしたか?
あなたが仕事に残ることで、具体的にどんな問題を回避できたのか覚えていますか?
プロジェクトやそのスケジュールをまったく顧みずに、次回の休暇を計画すべきだと提案しているわけではありません。3 週間ほどのプロジェクトであれば、あなたも待てるでしょう。メジャーリリースの前の週に休暇を取るのは、間違いなく無責任なことです。しかし、あなたが途中で1 ~ 2 週間の休暇を取ったせいで、9 ~12 か月のプロジェクトが大失敗するのであれば、そもそもプロジェクトをうまく管理できていなかったのだと思います。
もちろん、あなたの不在中を埋めてくれる人を見つけて、訓練しておくことは重要です。あなたの代理は、あなたがやっていた通りにはやれないかもしれませんが、プロジェクトが沈まないよう、正しい方向に進み続けることならできるでしょう。何か大きな問題があれば、あなたが戻るまで保留しておくよう伝えておいても構いません。
あなたの代理は別のチームのプロジェクト・マネジャーでも構いませんが、自分のチームから選んだ方がよいでしょう。チームメンバーの方がそのプロジェクトのことをよく知っていますし、そのメンバーが指導的役割につくときの試運転にもなります。ビジネスアナリストが一時的に「あなた」の代わりを務めるのがぴったりな組織もあります。ビジネスアナリストは要件についてよく知っています。そして、最初からステークホルダー全員をプロジェクトに参加させていれば(そうすべきですが)、ビジネスアナリストは開発イテレーションの基本的な運用についても知っているはずです。
アジャイル開発における「自律したチーム」というコンセプトは、重要かつ強力です。このコンセプトでは、プロジェクト・マネジャーはチーム全員がしたがうべき、理解しやすく可視化されたプロセスを整えます。チームがプロセスを取り入れるにつれ、プロジェクト・マネジャーは管理することが減っていき、手助けすることが増えてきます。基本的に、毎日細かいところまで管理するのではなく、障害を取り除いて問題を解決することがあなたの仕事になっていきます。
順調にいっている自律したチームには、うれしい副産物があります。そのひとつが、プロジェクト・マネジャーが適時休暇を取っても、ほとんど問題がないということです。たとえあなたが数日間不在になっても、プロジェクトは自力で動き続けるのです。
休暇を予定するときには、リリースのタイミングに当たらないよう必ず確認しましょう。しかし、休暇はきちんと取りましょう。自分がいないとプロジェクトが止まってしまうのではと気にして、休暇をキャンセルしてはいけません。