人的要素を管理する
著者: James Grahamプロジェクト・マネジャーとして、私たちは細かいスケジュールにこだわりすぎです。チームメンバーを招集して、プロジェクトを脱線させるようなリスク要因を何とか予測しようとします。割り当てられた予算内でプロジェクト成果物を絞り出せるかどうか、計算しようとします。しかし、ここで私たちは、プロジェクトが失敗する一番の原因を見落としたり、無視しています。それは人的要因です。
エラーから不意の事故や純然たる不履行まで、実行時の人的ミスというのは、過去の行動を繰り返すことに関係している場合がよくあります。前回うまくいったのだから、今回もうまくいくはずだと考えてしまうためです。古いことわざにあるように、「金づちしか持っていない人には、すべての問題がクギに見える」のです。心理学の研究によると、ストレスの影響を受けている人は、過去に成功した経験があるとそのときと同じやり方に頼ってしまい、学習レベルや経験レベルが当時に戻ってしまうそうです。私たちにとって、新しいソフトウェアプロジェクトを引き受ける際のストレスは、非常に大きいものなのです。
ほとんどのプロジェクトの目的は、新しい製品やサービス、ソリューションを作り出すことでしょう。したがって、過去の行動の繰り返しではなく、気持ちや業務スタイルの機敏さや柔軟さをもって行動することが奨励されるべきです。これまでとは違った新しい課題に直面したとき、古いプロセスにしたがうのは逆効果かもしれません。
形式的なプロジェクトマネジメント手法に精通したビジネスアナリストについて考えてみましょう。開発者がなぜソフトウェア開発にはアジャイルなアプローチの方が理にかなっているかを説明すれば、彼はおそらく頭では同意してくれるでしょう。しかし、プロジェクトが危険にさらされるような時間的プレッシャーに直面すると、過去にうまくいった経験から、お気に入りのテクニックを使おうとするかもしれません。それが実際にはソフトウェアと関係のない経験であったとしてもです。
銀行の指導官らの報告によると、数を逆にするのはよくある間違いで、特に従業員が仕事関係もしくは個人的ストレスのために100% 集中できないときによく発生するそうです。賢明なプロジェクト・マネジャーはこうした人間の性質を熟知しており、こうしたヒューマン・エラー型の不注意がないか、見積もり、予算、その他ドキュメントを注意深くチェックしています。
プロジェクトチームにとって何がストレスになるのでしょう?
仕事に向かう前に奥さんとケンカしたといった個人的なものかもしれませんし、家庭の財政難なのかもしれません。健康や子どもといった家族の心配事もあるでしょう。
仕事関係の衝突もストレスを引き起こします。重要なステークホルダーとのミーティングに遅れることや、大事なドキュメントを持ってくるのを忘れるといった、それほど深刻ではないものもあるでしょう。雇用確保の懸念もあれば、プロジェクトの実装やテストが目標通りに完了できないかもという心配もあるでしょう。
人はストレスがあると、積極的な問題解決行動ではなく、過去の行動に後戻りしようとします。ストレスの兆候に目を光らせて、チームメンバーが過去の行動へ後戻りしないようにすること、それがプロジェクト・マネジャーとしてのあなたの仕事です。チームメンバーと積極的に会話をして、仕事環境を注意深く管理することによって、ストレスの影響を防いだり最小限にすることができるのです。
私たちは人間ですので、仕事場に感情はつきものです。しかし、ソフトウェアを開発できるのは私たちだけなのです。ですから、人的資源を注意深く育成し、管理しましょう。ほかの資源を監視して保護するのと同じです。