人的問題にスプレッドシートを持ち込まない
著者: Anupam Kunduあなたはこれまでに、プロジェクトにおける自分の仕事を説明するために、一連のアクティビティが書かれたスプレッドシートを見せたことはありますか?
多くの経験豊かなマネジャーがスプレッドシートをプロジェクト管理・監督のための「銀の弾丸†」として使おうとしています。
トムについてお話しましょう。トムはある大企業のオンライン部門のIT 開発アーキテクトです。彼には4 つ以上のステークホルダーがいました。トムは各ステークホルダーに対する成果物をうまく優先順位づけできていなかったため、結局毎週どこかのステークホルダーをイライラさせたり、がっかりさせていました。トムには果たすべきコミットメントがたくさんあるのに、手元のリソースが少なすぎました。そのためトムはいつも、それによって生じるステークホルダー間の争いの渦中にいました。
トムと彼のチームは有能なIT アーキテクトなのですが、ステークホルダーの期待をうまく果たすのに必要な時間とスキルセットが足らなかったため、オンライン部門にいる全員に影響を及ぼしていました。何か解決策はあるでしょうか?
訓練を受けたプロジェクト・マネジャーを迎え入れましょう。そして、トムと彼のチームの成果物を、毎週、毎月、あるいは3 ヶ月ごとに優先順位づけし、一覧表にするのです。
成果物を優先順位づけすることで、プロジェクト・マネジャーはステークホルダーとの議論をうまく運べるようになります。この優先順位は内部の顧客全員によって評価されます。こうすると、ステークホルダーが期待を正しく抱けるだけでなく、トムと彼のチームもタスクリストを頻繁に更新して、その週の検討課題のうち最も重要なアイテムの開発に集中できるのです。
こうした計画を効果的にやる秘訣は、各プロジェクトごとの成果物リストにスプレッドシートを使うのをやめることです。その代わりに、プロジェクト・マネジャーがステークホルダーの期待を設定しましょう。トムが自由に使えるリソース(時間、お金、人)を考慮しながら、ステークホルダーも巻き込んで、どのフィーチャーや機能が最も重要/ 価値がある/ 収益をもたらすかを優先順位づけするのです。そして各グループは、その週に期待していたことがどれだけうまくいったか、オンライン部門のほかのニーズも考慮しつつ、フィードバックを得るのです。チームの仕事を計画するとき、特に複数のプロジェクトに優先順位をつけなければならないときには、コミュニケーションが最も有効な手段となります。
おそらくトムのチームには、過去のプロジェクトで、ステークホルダーの誰かとうまくいかなかった経験があるでしょう。このアプローチを使えば「ブラックリスト入りした」チームでも期日までに仕事を完了させることができ、さらに積極的にコミュニケーションをとることによって、過去の傷跡を癒やせるはずです。
結局のところ、プロジェクトマネジメントとは人を管理すること、そして人がかかわるプロセスを管理することです。チーム内や張り合っている組織間では、人間関係が衝突することがよくあります。考え方、目標、価値、信念、ニーズには多様性があります。これはチームの強みであって、弱みではありません。とはいえ、個人的な衝突や、チーム内のワークフローの優先順位における衝突は避けられないことです。
たいていの場合、こうした衝突は生産性や効率に対する脅威となります。それをうまく解決することは、現場の関係を強化し、創造力に富んだ変化をうながし、結果を改善します。あらゆる競合を解決するのは、積極的なコミュニケーション、積極的傾聴、思いやりのある理解、効果的な交渉あるいは調停です。熟練したプロジェクト・マネジャーが必要とされています。なぜなら、スプレッドシートでは人的問題を解決できないためです。