ドキュメントは手段であり目的ではない
著者: Patrick Kuaかつてアイゼンハワー大統領はこう言いました。「計画は役に立たないが、計画することは不可欠だ」。成功しているプロジェクト・マネジャーは、計画を細部にわたり慎重に更新するというオーバーヘッドなしに、いかにして計画することから利益を得るのかを心得ています。彼らはドキュメントを積極的に活用して、有意義な会話を生み出しています。もちろん、ドキュメントはあらゆるコミュニケーション手段を置き換えるものではありませんし、だれかが合意を破ったときに追求する手段でもありません。
特定の目的を実現する状況において、計画と追跡はプロジェクト・マネジャーにとって不可欠なアクティビティです。たいていの組織は、どれだけ計画に忠実か、どれだけドキュメントを完全に仕上げて、配布し保管したかで、プロジェクト・マネジャーを評価しています。しかし、それは間違いです。
計画について誤解している組織では、プロジェクト・マネジャーに「どれだけ正確に計画を守ったか」質問します。もっと重要な「要求された期間で最高の価値を実現できたか?」という質問をせずに、こうしたマイクロマネジメントにつながる質問をする企業には気をつけましょう。価値というのは、与えられた予算内で適正な目的を実現することや、顧客を喜ばせること、期待を上回ることによって判断されるべきです。間違った基準にしたがっていると、最終目標が実際に何を目的としていたのか、すぐに忘れてしまいます。
計画の策定とドキュメントの完成だけに注力すると、進捗や成果を錯覚してしまいます。計画の実行は簡単であり、計画は正確であり、どちらもほとんど問題がないように思えてくるのです。
プロジェクト・マネジャーがプロジェクトの参加者全員に対して、計画にあるアクティビティとスケジュールを何とかして守らせようとしている光景を何度か見たことがあります。状況の変化を認識したときには、新しい状況に基づいてアクティビティを再計画するようチームを導くことが有効なのですが、彼らはそれを理解していないのです。
計画とドキュメントには、目標を達成するためにビジネスにとって重要な情報が含まれています。しかし計画とドキュメントだけでは、実際のところ全く役に立ちません。計画とドキュメントが焦点を当てている成果に基づいて行動しようとする人が必要ですし、計画とドキュメントに含まれている情報を知っておくべき関係者に伝えようとする人が必要です。
したがって、伝えるべき適切なレベルの情報とは何なのか、その情報をプロジェクトの成果に関係するステークホルダーに伝える最善の方法は何なのかを検討することは、どんなときであっても重要になります。重要なデータを伝えるには、ドキュメントは最悪の選択である場合が多いです。最も豊かなコミュニケーションとは、直接顔を合わせることです。
プロジェクト・マネジャーは、追跡可能性や監査要求を満たすのに必要なオーバーヘッドと、最終的にプロジェクトに価値をもたらすドキュメントに頼らないアクティビティとの間で、微妙なバランスを維持するという難題もこなさなくてはなりません。
成功しているプロジェクト・マネジャーは、十分に計画して、必要な詳細だけを記録します。そして問題が起こっていることを理解し、新しいニーズや予期せぬニーズのために計画変更が必要な場合があることを認識しています。計画プロセスを経てできたドキュメントは、安定したプロジェクト進行のための手段であって、それ自体が目的ではないことを覚えておきましょう。