スピードこそ命、速ければ速いほどいい?
著者: Matt "Boom" Daniel「スピードこそ命、速ければ速いほどいい」というのは、戦闘機界隈でよく耳にするスローガンです。思い浮かべてください、聞こえてきませんか。「速くなきゃ!」そうでしょ?「すさまじいスピードでやらなきゃ!」そうでしょ?「急接近、即離脱!」そうでしょ?
戦闘機パイロットの毎日の飛行生活において、スピードが基本的ニーズであることは否定できません。(映画『トップガン』でマーベリックとグースはそう言っていました。だからそうに違いありません。)
しかし、スピードこそ命で、速ければ速いほどいい、というのは常に正しいのでしょうか?
昔ながらの一対一のドッグファイト†では、速度を落として旋回半径を最小にすることが生き残るためのひとつの戦術になっています。自機が小さな円を描くよう旋回して敵機に大きな円を描かせることによって、敵機を自機の前方にもってこられれば、絶好の射撃ポジションをとることができます。「相手が描く円の中」に入り込むのです。2 つの機体はこのようなアクションを繰り広げながら、メジャーリーグの速球のように飛行します。これが真の操縦というものです。
科学的研究によれば、特定の動き、戦術、射撃に関して、過度なスピードよりも適度なスピードの方が有利であることが証明されています。目標にすべきは、最高のスピードではなくて適度なスピードなのです。したがって、特定のニーズや戦術を選ぶと、もはやスピードは重要な評価基準のひとつにすぎなくなります。もっとも重要なことは、そのエネルギー(スピード)をどのように使いたいか、なのです。
戦闘機パイロットの世界以外について考えてみましょう。危険を冒しながら新しいテクノロジーに参入した最初の会社は、必ず勝利しているでしょうか?
関連する製品やサービスが生き残ることが目標だとすると、せいぜい「たぶん」としか言えないでしょう。
マーケットで一番最初になること(スピード)は、ビジネス計画には何ら影響を及ぼさないかもしれません。テクノロジーの世界では、先駆者が失敗したり、エネルギー(スピード)を集中させすぎたり、十分なエネルギーマネジメント(ビジネスにとって有益なときにのみ、そのスピードを発揮する)をしなかったために自滅した事例がたくさんあります。● 衛星通信:イリジウム(グローバル衛星電話技術)は、簡単で安価な通信システムが一般大衆の手に届くようになったことで、追い抜かれてしまいました。● ビデオデッキ:ベータマックスはVHS よりも先に開発され、最初にマーケットに出たすぐれた製品でした。しかし、それを開発した会社は製品、サービス、副産物のクロスライセンスを拒否したため、結局すたれてしまいました。● PDA:アップルコンピュータのニュートンはマーケットにいち早く出ましたが、結局はパーム社の製品に追い越されてしまいました。● TV-to-Web:WebTV はディスプレイにコンピュータモニタではなくテレビを使った初期の革新的な製品でした。しかし、決してヒットすることはありませんでした。
自問してみましょう。あなたはプロジェクト・マネジャーとして、リリースのスピードと長期的な妥当性の確保のバランスをどのようにとりますか?
新しいソリューションを陳腐化させないために、どんなツールやプラクティスを活用しますか?
「スピードこそ命、速ければ速いほどよい」という考え方に注力しますか?
それは強みですか、それとも弱みですか?
あなたの環境において、スピードとは何を意味していますか?
あなたのプロジェクトチームにとって、エネルギーマネジメントとは何を意味していますか?